「夢や目標」なんていう大それたものではなくても、日々の生活で「やらなくてはいけないこと」はたくさんやってきます。
学生さんであれば「試験」「課題」、ビジネスパーソンでは「メール返信」「締め切りの仕事」
もっと細かいことであれば、「定時に出勤する」など、枚挙にいとまがありません。
そんな小さなことからやがて大きな結果へと結びつく「実行力」がこの本のキーワードです。
表紙を見ると、ポップな感じでとっつきやすそうですよね。単なるライフハック的な本?
いや!違います。そんな印象とは裏腹に中に書かれていることは非常に本質的でかつ実践的。
もっと重厚な表紙デザインでも・・・よさそうですが、そういう本って第一印象で読むことへのハードルが上がってしまうことは無きにしも非ず…
「後回しにしない技術」は、今後一生手元に置いておくであろう、と読んですぐ感じた本です。
著者
「イ・ミュンギュ」さん。心理学博士、臨床心理専門家です。
博士の学位を取得されたり、教授として教鞭を振るっている高名な方。
人間の心理という側面から実際の人間の行動を通して、さまざまな角度から「実行」に結びつく、そんな「技術」を教えてれる本です。
この本の効果を最大限に引き出すために
「貴重な時間を投資して本を読む以上は、受動的な態度ではなく、積極的な姿勢で読んでほしい。」
この一文に、著者の読者への寄り添ったメッセージを感じることができます。
折々に自分に「この本はどう自分に役に立つのか?」ということに立ち返り、これまでのただ読んでいただけだった「読者パラダイム」を変えて読む。
「質問は答えより重要である」と言うように、こういった啓発本は、ただの読書のためにページをめくるはあまり効果的ではないように思います。
常に自分の中にある一定の「問い」を持って読んでいくことで、今までになかった「気づき」を得ることに繋がります。
気になった部分はどんどんマークしコメントを書きこみ、ノートのように本を使っていく。
いかに自分にプラスにしていくかが大切という考え方は、この本に限らずすべてに言えることでしょう。
「決心」するときに陥りがちな心理、背中を後押ししてくれる考え方
この本は大きく分けると、「決心」-「実行」-「継続」の3本の柱で構成されています。
その中の細分化された項目は実際にはすべての柱に密接にかかわっている・・・そういう印象を受けます。
しかし、それぞれの項目は独立しており、どこからどう読んでもわかりやすい、という親切な構成です。
人間は、締め切りまで時間をいっぱい使うという傾向があります。
1週間後までの課題と1カ月後までの課題があったとしても、それぞれ学生から提出された課題のクオリティーに違いは見られないそうです。
そういう心理を逆手にとり、「開始締め切り」を設けるといいと説きます。
「始める日、時間」を設定することで、「終了締め切り」に合わせようとする行動パターンを変えることができます。
その締め切りに合わせて考えたいのが「逆算スケジューリング」。
最終目標がいまやるべきことを決める。スポーツ選手が大会の日程に合わせて身体を整えていくように、「こうなりたい、こうなっているべき」という地点から今の行動を考えていくということです。
何も勉強や仕事のことだけではなく、「10年後自分の子供が親として慕ってくれているには今どうすべきか」「名刺から肩書が消えた時のことを想像する」といったように、自分の人間性も磨くことができる思考方法です。
また、自己啓発本でありがちな「成功のイメージを鮮やかに思い描く」については「簡単に挫折し、バラ色のイメージに逃げ込む」とあります。
その目標までの道のりを考えて、どのような障壁が待ち構えているか、代案をいくつも用意しておく。
どんなに準備していても訪れる突発的なトラブルに対して、あらかじめ「悲観的な考えも併せ持つ」ことで、「ストレス免疫訓練」となり精神的なダメージを減らすことができます。
ちなみに、何かやろう!と思ったときにみなさまなどれだけ周りに言っているでしょうか?
「ひそかな決心は、決心しないことと同じ」という言葉は特に胸に刺さりました。
「できなかったら恥ずかしい」とか、「わざわざ自分の決心を公開するものでもない」など、考え方はいろいろあるでしょうが、結果自分がいかに行動するように自分に仕向けるか。視点は他人ではなく自分にあるのがポイントです。
この本のテーマである「実行力」というにはやや慎重な姿勢にも感じる第一章。「今まで同じことの繰り返しだった」「夢はあるけど現実なにもしていない」という方にうってつけの内容です。
また、次の章は「行動」にフォーカスしていますが、行動した後に軌道修正として一章を参照しても十分価値があるはず。
そういった意味では、順序として二章と一章は時として入れ替わることもあるはずです。
ではこの本のメインテーマである二章に参りましょう。
自分の人生を「行動」によって変えていく
人間は、やらなくてはいけないことがわかっていてなぜすぐ行動に移せないのか。
様々なケースでのそういう人間の心理を鋭く突いた項目が並んでいます。いくつか、非常に響いた項目があったのでこちらでは箇条書きで挙げていきます。
「派生効果」をイメージして、モチベーションにつなげる
「投げる石ばかり見るな。水面に広がる波紋を見よ。」
白熱電球の発明に成功したエジソンは、1000回以上の失敗を重ねながらも研究を続けたと言います。
その原動力のひとつとして紹介されていたのが「派生効果ノート」。
彼は、白熱電球の発明によって得られる世の中全体に及ぼす効果を、9ページにもわたって書きこんだそうです。
「実用的で耐久性のある電球をつくれば、アメリカ中の家族、工場、事務室、建物、農場の石油ランプやガス灯は、わたしが発明した電球に取って変わられるだろう。そうなれば電気がたくさん必要になるだろう。そうしたら、わたしは発電機を作って販売する。」など・・・
もしもエジソンが白熱電球を売ることがすべてだと考えたら、はたして失敗を乗り越えることができたでしょうか。
ひとつの目標を放棄したら、その目標だけでなく、そこから生じる多くの派生効果までもすべて放棄しなければならない―
目標達成後の派生効果まですべて考えることは、苦難と挫折に打ち勝つ大きな原動力になるのです。
私がお店を出す、という目標の派生効果を考えると、「近隣の方々に歳時記を身近に感じてもらえる」「いつでも炊き立てのご飯を召し上がっていただける」「酒米違いの新たな日本酒の楽しさを味わっていただける」…など、考えるだけでワクワクします。
最初の1%にすべてを注げ
ちょっと後回しにしたいこと。敬遠しがちなこと。気が進まないこと。誰にだってありますよね。
「部屋の片づけをしたいのだけど、なかなかやる気が出なくて…」「台所の洗い物、片づけなきゃ…」
意欲がわかないことに手を付ける最もよい戦略は、「まず小さなところから始めてみること。」
手元の本を本棚に戻すだけ。全部洗うのはしんどいから、手を洗ったついでに箸だけ洗おう。
しかし、不思議なことに、いったん始めさえすれば、そこからは楽に進むことが多いですよね。始めないから意欲がわかないだけなのです。
むしろ箸を洗い出したら、他の食器をどう効率よく洗うか考えながら続けている自分がいます。
人生は実験の連続
失敗とは、もうひとつの成功体験である。仮説が間違っていたという事実を教えてくれ、新しい仮説が必要だという事をわからせてくれる。
エジソンが普通の人と違うのは、他の人が「経験」というところを「実験」と考えた点です。
呼び方が変われば考え方が変わり、考え方が変われば行動も変わる。
普段の仕事すべてを「実験」と捉えることは難しいです。なにせお客さまがいるわけですから。
しかし、その準備段階であれば話は別。試作をするときには取り組みへのハードルを下げ、結果成果に結びつきます。
「継続」いかに効果的に続けていくか
ここはあくまで「実行」に移した後の行動全般について述べられています。成果が出た後、というわけではないのがポイント。
人間は自分で思っている以上に他人からの言葉に振り回されることがあります。
その際大事になるのが「セルフイメージを言葉にしておく」ということです。
簡単に言えば「私はこういう人間だ」というとらえ方を定めておくということ。よく「自分の軸」とか「座右の銘」なんて言葉もありますが、もっと単純な話です。
「私はうそをつかない人だ。」「私の夢は居心地の良い食事処を作ることだ。」「私の仕事は周囲の人に波紋のように広がって地域を笑顔にするんだ」
など、範囲は夢のように広いと、物の見方もずいぶん変わってきます。
「しがなき居酒屋の店主です」なんて小さい箱に閉じ込めてしまっては、そういう人間として今後生きていくことになる、ということになります。
「良い意味の思い込み」と考えることもできますね。ポジティブであればどんなことでも良いと思います。
この仕事を続けていると、働くことが目的になってしまっている人が結構います。
それは「労働時間」という縛りとはまた別の話で、ひたすら走り回っているけど効果が上がっていない、そういう人です。
メニュー数、レシピや客数で店ごとに違いますが、キャパシティー越えのメニューを長時間労働で補う、というのは非常に非現実的です。
きちんと作れる範囲のメニュー数におさえ、できる範囲でしっかり効果的に仕事をする。
余裕を感じたら少しずつアップデートしていけばいい。
誰にとってもメリットのある手法でないと、仕事に自分が追いつめられるような事態になりますよね。
このブログはどちらかというと手法的な内容となってしまいましたが、本はもっと本質的です。
読者としてアウトプットすると、そうなりがちなので、もっと「伝える側」としての文章構成は必要ですね。
こうして実行してみるとわかります。
とにかく表紙以上のインパクトがあります。すべてのひとにオススメできます!!
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