「ビジネスパーソンなら必読中の必読。」
私が尊敬する人物が言っている通り、仕事をする際の知的生産性の本質に迫る内容が色濃く書かれている本です。
タイトルにある「イシュー(issue)」とは、「そのおかれた局面で本当に答えを出す必要があるもの」。
日々の生活をより本質的なものに近づけるために、この本を読み解いて行きましょう。
著者「安宅和人」氏
さてこの本の著者、「安宅和人氏」の経歴はというと…
- 経営コンサルティング会社「マッキンゼー」で11年勤務
- その後脳神経科学で有名なアメリカ「イェール大学大学院」にて学位取得
- アメリカ同時多発テロ後、マッキンゼーに復帰
- YahooCEO就任
およそ常人では計り知れない超エリート。
科学者とコンサルタント、ビジネスの第一線の現場という経験のミックスから生み出された物事の「本質」をこの本で学ぶことができます。
ちょっと読みづらさはあるかも・・・
ただ、微妙な読みにくさを感じる本でもあります。
- 本の中で結構重複した部分が多い。
- 章の最も大切な部分が意外とサラッと書かれたりしているので、しっかり輪郭を見付けながら読んでいく必要がある
- 事例を含めて説明されているものの、本を通して統一された事例ではないので、自分事に落としにくい
- 抽象度が高い
飲食店店主として、この本をどのようにインプットし、仕事に活かしていくか。本の内容を交えながら、その視点でブログを書いていきます。
「イシュー」を見極め、「犬の道」に逃げ込むな
私がまず刺さった部分がここ。
冒頭でも触れましたが、
「イシュー(issue)」とは、「そのおかれた局面で本当に答えを出す必要があるもの」とこの本には書かれています。
書籍の中にある「issueの定義」なるものはあまりに辞書的でわかりにくいため、初めのうちは、正直読み飛ばしてしまいましょう。
もっとかみ砕くと「正しい方向に向かって問題を解決しようとしているか」ということです。
そこをしっかりを見極め、いかに限られた労力で高い生産性を叩きだすか。
旧態依然とした料理人では、「努力と根性で仕事に励め」という方も見受けられます。
かくいう自分もそういったことをしてきました。
「真の成長は意味のあるアプトプット(成果)からしか得られない」。
お客様が望むのは、お店で得られる感動的な体験ですよね。やはり日常以上のものを体験したい。
それをいかに普段の仕事で継続して生み出し続けるか、ただがむしゃらだと単に「一生懸命やってます」的な自己満足に陥ってしまう。
非常に耳の痛いテーマです。
とはいえ、本質的なイシューを見極めるためにはそれ相応の経験と見立てる力が必要になってくると書かれています。
まずは、社会人としてその業界で常識とされていることはひととおり正しく理解する。
「多くのプロを目指す修行のかなりの部分はこれらの既存の手法、技の習得に費やされる。
この際に「イシューからはじめる」意識をもっていれば、さまざまな場面を想定した技の習得意識は大きく高まる。
目線が高い人は成長が早いというプロフェッショナルの世界における不文律は、この意識に由来しているのだと思う。」
つまり修行の段階から「イシュー」という課題は始まっていて、
単に毎日「数やれば上手くなるさ」という漫然とした時間は「犬の道」ということに他なりません。
耳が痛い。笑
「イシュー=答えを出す必要があるもの」がわかったら「仮説を立てる」
例えば「お店の来客数が減っている」という問題について、具体的に仮説を立てることで「答えを出し得る問題とする」ということです。
人間は言葉にしない限り概念をまとめることができず、明晰な思考を行うことができません。
この大きな枠の設問からどれだけ本質的な方向性を見極めて絞り込んでいくか。
ここが勝負所です。
ここで「なぜ~なのか」というWHYベースの考え方は仮説がなく、何について白黒つけたいのかが明確ではないので、
- 「WHERE」どこを目指して
- 「 WHAT」何をして何をやめて
- 「 HOW」どうやるか
という
「答えを出す」という視点に持っていくのが大事です。
「お店の来客数が減っている」のであれば、
「WHERE」どの層の顧客に届けるのか、だったり店の中のQSCVどこに問題があるか
「WHAT」アプローチは何をするのか、店舗の問題は具体的になにか
「HOW」どうやってそのアプローチを行うか、
お店の問題をどう解決するか
とざっくり考えて仮説を見出すことができます。
そうすれば、必要な情報や分析すべきことがわかり、その結果の解釈も明確になります。
仮説を立てる際の情報の集め方
ここは「一次情報」、すなわち「肌感覚」が重要だと説いています。
だれのフィルターも通っていない現場に漂う雰囲気、工程。
他人からの話だけでなく、
「自分の頭でものを考えて」作り上げていった世界観でないと、
複合的な意味合いを考え抜くことができません。
いわゆる、マニュアル対応やレシピのみの仕事ばかりしていると、不測の事態に対応できなくなる。ということです。
普段マニュアル通りにやっていたとしても毎回微妙に違う人の感情や材料の違いに肌で感じて考える。
その積み重ねが大事ですね。
これから取り組むイベントの企画を練る、というイシューについても「やってみなくちゃわからないよね」とは絶対言わない。
ここで踏ん張って仮説を立てて答えを出せるかがカギとなります。
情報を集め過ぎない、知り過ぎない
情報は意図的にざっくりとやる、これが大事だと語ります。
情報収集にかけた努力と手間とその結果得られる情報量にはあるところまでは正の相関がありますが、そこを過ぎると途端に新しい取り込みのスピードが鈍ってきます。
そのため、時間に対して実効的な情報が増えていくことはないので、生産性が下がってきます。
また、「知り過ぎ」はもっと深刻です。
ある情報量までは急速に知恵が湧きますが、ある量を越すと急速に生み出される知恵が減り、もっとも大切な「自分ならではの視点」がなんと「ゼロに近づいていく」と書かれています。
人が新しい領域を知っていく際の好奇心や視点をそのままに、「知り過ぎたバカ」にならないようにしたいです。
確かに、これまでやってきた仕事のやり方を踏襲してしまう傾向があります。
独自の新しい視点を持つには、やはり「知っていくことの楽しさ」や「身につけていくことのやりがい」を思い出し、自分ならではの視点を持つための情報収集をいくつになってもやっていきたいです。
読んだ感想から言うと、この本の一番大事な部分はここまでで集約されています。
あとは掲げたイシューに対してどう「解の質」を上げていくかの作業です。
このあと書かれている「ストーリーライン」「絵コンテ」は論文やプレゼンの作成に大きな効果を及ぼす作業と言えるでしょう。
我々の仕事にもきっと大きく役立つ部分ですが、ひとまずはここまで読むだけでも大きな気づきを得られます。
最後に「コンプリート・スタッフ・ワーク」を念頭に置く
飲食店もそうですが、コンサルタントとは「時間外労働」という概念がないと言います。
結果に対する強い意識がないと、仕事の 奴隷のような生活になってしまいます。
マッキンゼーの教義に、「コンプリート・スタッフ・ワーク」「自分がスタッフとして受けた仕事を完遂せよ。いかなるときにも」があるそうです。
これはプロフェッショナルとして仕事をする際には常に激しく自分にのしかかってきます。
プロフェッショナルの世界では「努力」は一切評価されず、あくまできっちりとした成果が生み出されてのことです。
すべての仕事は結果がすべてであり、この結果があるレベルの価値に到達しないと、その仕事はいかなる価値も持たず、多くの場合マイナスになってしまう。
「「コンプリートワーク」をするためには命を削るような思いをするだろうが、命を削ることそれ自体には何の意味もない。その酷薄なまでの真実が、僕らを時間から解放し、本当の意味で自由にしてくれる。
仕事から生み出した結果そのものが自分を支え、励ましてくれる。
生み出したものの結果によって確かに変化が起き、喜んでくれる人がいることがいちばんの報酬になり、なんとも言えない達成感を生む。
イシューをしっかりと持つだけで僕らの生活は格段にラクになり、毎日が格段に充実したものになる。
一日一日で生み出す価値ははるかに大きくなる・・・」
最後に安宅氏はそう締めくくっています。
今後ワンオペレーションで限られた時間をどう使っていくかが課題となりますが、「イシューからはじめる」ということを忘れず、日々の仕事に活かしていきたいです。
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