この「創業計画書」の記事は、日本政策金融公庫フォーマットに沿って実際に書いて行ったことをもとに作成しています。
今回は、第3項目「取扱商品・サービス」についてです。
ここは事業をやっていく上で根幹的な部分。フォーマットだと数行ですが、まぁこの紙切れ一枚で済むはずがありませんね…
ここはフォーマットの書式はひとまず置いておき、具体的に自分がどんなお店をやっていきたいのか。
ここをとことん突き詰めて考え、文章に落としていく作業です。
では、「上」記事からの続きです。「上」の記事はこちら
立地コンセプト
どこにオープンするのか?評価してくれる人はどこにいるのか?とう視点です。
駅に近ければ近いほど、駅を利用するお客様の来店を見込めますが、その分家賃も高くなってきます。
駅は人流の要のひとつなので、物件を選ぶ要素としては重要です。
しかし、それに囚われると実は他のコンセプトまで揺らいでしまいます。要は、「お客様を呼べるコンセプト作り」に終始徹底すべきです。
そのため、他の項目を埋めていくに従って、立地はこうしよう、とか微調整を繰り返していきます。結果、その過程で煮詰まっていくのです。
私が考える立地コンセプトは、
「駅近だが少し外れたところ。帰宅するには差し障りない。ビルのテナントに夜のお店のような雰囲気がなく、子供も連れて行ける」です。
物件を見ると、住宅街のものも多く、魅力的にも見えるのですが、世帯層を鑑みる必要が出てきます。
もちろん、自分の希望に沿った物件など期待しない方が賢明です。あくまで希望ではありますが、立地と他の要素は結びついていきます。だからこそしっかり見定めておく必要があります。
価格コンセプト
いくらで売るのか。その価値があると感じてもらえる評価額は?
ランチ、夜ともに週3回は来てくれる価格帯が理想ですが、価格競争では大手チェーン店には絶対に勝てません。
一品一品の安さにこだわるのではなく、客単価を設定し、その価格に達するには一品をどのくらいの値段設定にするのか、とう視点から算定していきます。
これは料理については比較的イメージしやすいのですが、ドリンクはあまりこれまで注意深く考えてこなかったので、悩みどころです。
いずれにせよ、ただ単に料理を決めて売るのではなく、何かしら付加価値をつけていくこともお客様の満足度に大きな影響を及ぼします。
この「付加価値を付けて売る」という考え方、いろいろな店長を見てきましたが真剣に考える人は皆無でした。
どこ産だとか旬だとかは当然として、それこそ「出来立てアツアツです!」「人気メニューです!」「これ美味しいんです」とか、ちょっとその料理に一言付け加えて出すことで美味しさがグッと増します。
「こういうネーミングで、こういう部分をアピールしてほしい」と伝えても、メニューにはちっちゃく書かれていたり、言ったことを書いていなかったり、作る側の気持ちが反映されないことが本当に多かったです。
もちろん売る側の売りやすさも大事です。しかし、そうであれば売る側のアプローチも欲しい。ただ注文を受けて持っていくだけの運び人では料理に付加価値は絶対につかないのです。
同じ料理でも、漢字で書くのか、ひらがなで書くのか、カタカナで書くのかで印象は全く違ってきます。その感覚の相違にずっと向き合ってきましたが、がっかりすることも多くこれからはそういった面でも自分なりにやっていきたいです。
店舗コンセプト
どんなお店で、どんな雰囲気か。
ここは内装に関わるコンセプトです。モデルとなるお店の写真があるといいですね。
同じ業態でもお店の雰囲気は違って来るでしょうから、人それぞれ個性が出ます。
「オープンキッチンで、カウンター越しにお客様とお話ができる。狭苦しくなく、適度なパーソナルスペースがある。木目調の内装で、暖色系の照明。できれば昼夜で調光し、夜はやや明るさを抑える。」
接客コンセプト
どんなサービスを提供するのか。どうやって楽しんでもらうのか。
ここでは、対お客様の直接的な行動をイメージしていきます。
飲食店経営者であれば、今までの経験から接客すること自体は難しくないでしょう。しかし、そこをどう魅力的にしていくのか。ただ「いままでのように」なんて考えているだけではお客様に印象を持っていただけるお店にはなりません。
「我が家に帰ってきたかのようなお出迎え。「いらっしゃいませ」が業務調にならないように、「こんばんは」「お帰りなさい」などの挨拶を自然とする。」
ここまででかなりどんなお店にしたいかが明確になってきました。
さらに細かく細分化された「Q-S-C-A-T-V-P」も考えていきます。それぞれの単語の頭文字を取ったもので、ここもお店作りには欠かせません。もちろん運営していく上で自然にやっていく部分ですが、しっかり明文化しておくことで自分のお店の輪郭をよりはっきりさせていきます。
「Q-S-C-A-T-V-P」によるコンセプト作り
ここは私の考える一例を、一部紹介します。
Qークオリティ
趣のある器を使い、少しの非日常感を出す。酒器は適切なものを揃え、軽薄さを出さない。美味しさを一定にするため、妻と味付けを共有し、レシピを作成する。
Sーサービス
「接客コンセプト」と同様。
Cークレンリネス
汚れていない綺麗さではなく、綺麗な清潔さ。四隅のホコリ、斜めの光で浮き出るホコリは十分気を遣う。
店内の飾り、瓶などはこまめに拭く。
調理場は磨き上げ、光るところは光らせる。
Aーアトモスフィア
メインコンセプト「明るくて和やかな、お客様を我が家にお迎えするような素朴で飾らないお店」
Tータイミング
新規客を優先とし最初の一杯、一品を手早く、ワンオペなので料理提供の遅れが出ないメニュー構成とする。
Vーバリュー
普段使いではあるが、あまり日常生活では味わえない居心地の良さ。
Pープライス
「価格コンセプト」と同様。
一見抽象的な枠組みなようですが、様々な方面から考えて明文化していくと具体性がグッと増してきます。
「こうやって行動していく」ということなので、よくありがちな「気をつける」「がんばる」といった自主性や実態のないものに頼らない仕組み作りが必須です。
いかがだったでしょうか。
コンセプト作りは簡単なようで奥の深い作業です。
そして開業する上で7割くらいを占める根幹、軸の部分。
こまめに修正しながら、より自分のイメージに近づけ、実現可能な実態を見据えたものに仕上げましょう!
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